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ヘイ夫妻と振り返る「HAYの20周年」 HAYのある暮らし #8

HAYがデンマークで創業したのが2002年、それからちょうど20年が経ちました。創業者であるメッテ&ロルフ・ヘイ夫妻は、メッテがホームアクセサリーの、ロルフが家具や照明のクリエイティブディレクターを務めています。昨年は20周年を記念した書籍『HAY』(PHAIDON刊)も発売され、ブランドの歴史にあらためて光が当てられました。この本の冒頭で、ふたりはこう述べています。
「HAYは、上質で、美しく、実用的なデザインを、わずかな人々のためでなく、たくさんの人々のためにつくりたいという私たちふたりの情熱から生まれました。HAYのプロダクトを使ってくれる方を最大限にリスペクトします。そして、そんな人々の暮らしのために私たちはプロダクトをデザインしています」
この1冊を通して、メッテとロルフがいかにHAYの製品を深く愛し、その魅力に思い入れを持っているかが伝わってきます。

  • HAY
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この20年間を振り返りながら、いくつかの質問についてメッテとロルフに答えてもらいました。
「私たちがHAYで夢見たのは、世界中の人々と仕事することでした。大切なのはデザイナーの出身地ではなく、デザインの美意識です。昔は一部を除き、デンマークの会社はデンマーク人を、イタリアの会社はイタリア人を起用していたけれど、私たちはその伝統から一歩先へ進むことにしました」
オランダのショルテン&バーイングス、フランスのナタリー・ドゥ・パスキエ、ベルギーのミュラー・ヴァン・セヴェレン、アメリカのアナ・クラシュ、日本の深澤直人や倉本仁……。HAYとコラボレーションするデザイナーは国も作風も多彩です。ふたりは、この姿勢こそHAYが世界中で知られるようになったひとつの要因だと考えているそうです。

書籍『HAY』でも詳しく紹介されているように、このブランドのもうひとつの特徴にユニークな色使いがあります。
「色彩と、それらの色が生み出すパターンは、私が仕事する際にひときわ重要なふたつのツールです。ロルフが担当する家具はちょっと違うかもしれませんが、私にとっては多くの場合、色はデザインプロセスにおいて、またデザイナーや協業者と対話を始める時から、すでに欠かせない要素。私たちがつくるものやHAYというブランドの核に位置づけられるのです」とメッテ。彼女は、色やパターンの組み合わせを料理にたとえて説明します。
「食材の組み合わせは無数にあり、その組み合わせ方によって料理の味わいが変わります。色とパターンをどんなふうに空間に取り入れるかが、あなたらしい場所をつくるのです」

  • HAY
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一方、HAYにはミニマルで硬質な印象をそなえたプロダクトも多くラインアップされています。アメリカのレオン・ランスマイアーによるスツール「REVOLVER」や、ドイツ出身のステファン・ディーツによるシェルフ「NEW ORDER」はその代表的なもので、当初は他の家具ブランドから発表された経緯がありました。このような製品の意義を、ロルフはこう語ります。
「2014年に『Wrong for HAY』というコンセプトでデザイナーのセバスチャン・ロングと一緒に仕事した時、私たちはともに『REVOLVER』がHAYのコレクションにふさわしいと感じました。また『NEW ORDER』はディーツによるプロトタイプを見て、お互いに強く信頼するに至り、結局はHAYのコレクションとして量産が始まりました。以来、HAYの製品パレットの重要な一部であり、着々と発展し続けています」

さらにHAYのコレクションを豊かにしているのは、過去の名作だったものを、あらためて現在に甦らせた製品です。フリソ・クラマーの「REVOLT CHAIR」、フリソ・クラマー&ヴィム・リートフェルトによる「RESULT CHAIR」、昨年から加わったブルーノ・レイの「REY CHAIR」などがそれにあたります。
「多くの人々が優れたデザインにアクセスできるようにしてきたのは、HAYの誇りです。私たちの未来につながるデザインであれば、過去に目を向けることも怠りません。3つの椅子に共通するのは、当時の文脈においてアイコンだったものを、座面の高さやプロポーション、カラーリングなどの仕様を検討し、新しい世代に向けて再構築したことです」
こうした名作のセレクトには、メッテの直感的なセンスと、ロルフのデザインに関する豊富な知識を欠かすことができません。

  • HAY
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メッテとロルフが、夫婦で一緒に仕事することの大切さをどう考えているかも尋ねてみました。
「その大きなメリットは、とても正直でいられることです。たとえば、同僚や友人に対してなら主張できないようなことも、私たちの関係なら感情的にならずに話し合えます。また各々が違うカテゴリーを担当するクリエイティブディレクターとして、互いに補い合う役目も担っています」
メッテ&ロルフ夫妻は、インテリアを愛する多くのユーザーの目線と、コラボレーションする一流のデザイナーたちの感性を併せもっています。そして、ものづくりのエキスパートとして時代の先を見通す力があるようです。20年間にわたるHAYの軌跡は、常にインテリアの新しいムーブメントともにありました。ふたりがこれから見出していくものも、未来を指し示すに違いありません。

土田貴宏 ライター/デザインジャーナリスト。
2001年からフリーランスで活動。プロダクトやインテリアはじめさまざまな領域のデザインをテーマとし、
国内外での取材やリサーチを通して雑誌やウェブサイトで原稿を執筆。東京藝術大学などで非常勤講師を務める。
近著「デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ」(PRINT & BUILD)。