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椅子の張地を選ぶ愉しみ HAYのある暮らし #7

椅子を買う時に迷いがちなのが、張地の選び方。張地用のテキスタイルは、木やプラスチックなどの素材とは違い、色彩と質感が一体になった独特の美しさをもつものです。また感触や肌触りも製品ごとに異なっています。
HAYは数多くの張地用のテキスタイルを取り揃えていますが、中でもいちばんのおすすめはHAYと同じデンマークのブランド「KVADRAT(クヴァドラ)」です。その製品の特徴は、世界でもトップレベルの高いクオリティをそなえる上に、圧倒的な創造性が込められていることでしょう。一見、オーソドックスなテキスタイルでも、細かいレベルで高度にデザインされたものばかりです。

  • HAYのSOFA各種
  • Mags Sofa hallingdal 130
  • HALLINGDAL

1968年に創業したKVADRATにとって、その歴史を象徴するのが「HALLINGDAL(ハリンダル65)」です。その創業に先駆けて1965年にナンナ・ディッツェルがデザインを手がけた平織りのテキスタイルで、これまでコペンハーゲン空港はじめデンマークの多くの公共施設で椅子の張地に使われてきました。汚れに強く耐久性の高いウールを主素材とし、さらにシルクのような艶のある植物由来のビスコースを用いています。そのためテキスタイルに独特の存在感があり、カラフルな張地の場合はいっそう鮮やかに見えます。
全体がテキスタイルに包まれた「MAGS SOFA」は、張地次第でさまざまにイメージが変わるソファ。自然な色合いのHALLINGDALを合わせると、クッションの置き方で変化をつける楽しみ方も広がります。

「HARALD」は、ファッションデザイナーとして有名なラフ・シモンズが、KVADRATのアーカイブにあった製品をアップデートしたテキスタイルです。珍しいコットン100%のベルベットで、クラシックな趣のあるテクスチャーがとても新鮮に見えます。一言では表現しにくい微妙な色調は、ラフ・シモンズらしいセンスが見事に発揮されたポイント。そんな色彩感覚を製品として実現できることに、KVADRATのものづくりのクオリティが表れています。
KVADRATとラフ・シモンズとのコラボレーションは2014年にスタートし、これまで定期的に新作が発表されてきました。インテリアというジャンルを超えてテキスタイルの可能性を追求する姿勢は、このブランドの社風になっています。

  • Hackney Harald
  • Mags 2,5 seater surface by HAY 150

19世紀から活躍したデンマークの国民的な画家であり、日本でも人気の高まっているヴィルヘルム・ハマスホイ。その作品の多くは室内画で、柔らかい光の表現やグレーがかったトーンに特徴があります。「SURFACE BY HAY」は、そんなハマスホイの絵画をモチーフにデザインされた、HAYのためのKVADRATオリジナルの張地です。HALLINGDALと同様にウールを主素材とする平織りの生地ですが、さらっとした平滑な質感をそなえています。周囲に置く家具やラグも、この色のトーンを意識して選ぶと、ニュアンスのある空間をつくることができます。

デンマークのグラフィックアーティスト、フィン・スコッドがデザインした「DIVINA MELANGE」は、まるでフェルトのように見える平織りのテキスタイルです。彼は中世の絵画からインスピレーションを得て、生地を構成する糸にわずかに黒い繊維に混ぜることにより、色合いに独特の深みを与えました。
目の詰まったウール100%の生地は、自然な光沢と伸縮性に富んでいて、椅子の曲線的なフォルムをいっそう際立たせる効果があります。だからソファはもちろん、ヒー・ウェリングがデザインした「ABOUT A CHAIR」のようなシェルチェアにもフィットするのです。

  • AAC 23 Divina Melange 120
  • DIVINA MELANGE
  • Mags Corner comb 1 Remix 773
  • Remix

「REMIX」は、KVADRATの数あるテキスタイルの中でも長年にわたりベストセラーを記録している張地。ニュートラルな印象でありながら、近くで見るといくつもの色が複雑にミックスしてあるのがわかります。縦糸と横糸にそれぞれ最大3色の糸が使用してあり、見る角度によって色合いが変化するのが特徴です。また同じロングセラーでも、HALLINGDALがややざっくりした素材感であるのに対し、REMIXは丁寧にコームした糸を使い、オーダーメイドのスーツ地のように上質な雰囲気を漂わせます。一方、生地としての耐久性もトップクラスです。
シックな空間に合わせてもいいのですが、実用性の高いテキスタイルなので、組み合わせ方は自由。ダイニングチェアやタスクチェアとソファの張地を統一する使い方も可能です。

「REMIX」に近い雰囲気がありながら、さりげなくオリジナリティを主張するテキスタイルが「ATLAS」です。色合いのモチーフは、製品名の通りに古い世界地図。そこに見られるような歴史を経たアースカラーのニュアンスが、すべての色合いに生かされました。ヴィンテージ家具ともコーディネートしやすいカラーリングです。またREMIXが複数の色を混ぜた糸を織っているのに対し、ATLASは数種類の単色の糸を織り上げることで、独特の発色を生み出しています。

  • AAC 27 Soft Atlas 931
  • ATLAS
  • AAC 13 Steelcut Trio 3 446
  • STEELCUT TRIO 3

軽やかでくっきりしたイメージの「STEELCUT TRIO 3」は、3種類の単色の糸を織ったテキスタイルです。その3色のコンビネーションによるクリアな発色が、KVADRATが最もこだわったポイントだといいます。椅子のカラーリングを空間のアクセントにするにはぴったりの張地でしょう。また同様の素材感をもつテキスタイルに「FIORD(フィヨルド)」があり、こちらはよりナチュラルな色合いが充実しています。
STEELCUT TRIO 3もFIORDも主素材はウールですが、その素材感を抑えることで汎用性を高めているのも特徴。だからオフィスで使うタスクチェアやミーティング用の椅子にも適しています。ちなみにウールというと、寒い季節向きの暖かい素材という先入観をもたれがちですが、水分の吸収発散機能が高いのでまったく季節を選びません。耐久性やメンテナンス性の面でもオールマイティな素材です。

HAYとKVADRATの共通点は、どちらもサステナビリティに対して積極的に取り組んでいること。「RE-WOOL」は、そんなKVADRATの姿勢を表しています。この生地の90%はウールで、その半分はリサイクルウールを使用しているのです。リサイクルウールはいろいろなウールが混ざっているため、グレー系のくすんだ色合いになります。生地の裏側にリサイクルウールが、表側に新しいウールが来るように織ってあるRE-WOOLは、色の異なる生地でも共通したトーンを感じさせてくれます。
椅子の張地として使えるKVADRAT製品で、柄のあるテキスタイルは 多くありません。しかし無地のテキスタイルであっても、色合いやテクスチャーはきわめて巧みにデザインされています。そしてあらゆるデザインが、ものづくりのストーリーと結びついているのです。こうしたストーリーを意識することで、家具への愛着はいっそう高まっていきます。

  • Arbour 3 Seater Family
  • Re-wool

土田貴宏 ライター/デザインジャーナリスト。
2001年からフリーランスで活動。プロダクトやインテリアはじめさまざまな領域のデザインをテーマとし、
国内外での取材やリサーチを通して雑誌やウェブサイトで原稿を執筆。東京藝術大学などで非常勤講師を務める。
近著「デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ」(PRINT & BUILD)。