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ジャスパー・モリソンとアウトドアリビング HAYのある暮らし #17

現在発売中の「HAY OUTDOOR MARKET BY JASPER MORRISON SHOP」は、デザイナーのジャスパー・モリソンとHAYがコラボレーションした話題のシリーズ。ロンドンにあるモリソンの事務所に併設されたショップならではの目線で、アウトドア用の多様なアイテムを揃えています。この企画にまつわるエキシビションとトークイベントが、4月に「などや 代々木上原」で開催されました。トークは2部構成で、第1部はジャスパー・モリソンの作風や魅力を、第2部はアウトドアリビングの意義をテーマとするもの。エキシビションの様子とともに当日の対話を振り返ります。

HAY
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第1部に登壇したのは、今回の展示のスタイリングを手がけた作原文子さん、幅広いデザインに精通し造形作家としても活躍する山本孝志さん、そしてライターの土田貴宏。長年にわたりジャスパー・モリソンのデザインに触れてきた3人です。たとえば山本さんは、20年以上前に働いていたショップでモリソンと最初に遭遇したそうです。
「そのお店がデザイナーの柳宗理とゆかりがあり、柳ショップの場所を質問されたので、プリンタで地図を出力して教えたんです。それをきっかけにジャスパーのデザインに興味をもつようになりました。きっとジャスパーは、柳ショップを訪れた経験からジャスパー・モリソンショップを始めたんだと思っています。入口のわかりにくさ、規模感、見せ方などかなり影響を受けているんじゃないかなと」

作原さんは、モリソンによるアイテムを仕事のなかで数多く使ってきました。その特徴を「主役にも脇役にもなるところ」と言い表します。
「撮影だけでなく、カフェなどの家具を選ぶ時も、ジャスパーのものを使うことがよくあります。同じ椅子が並んでいてもきれいに見えるし他のデザイナーの家具とも合わせやすい。さりげないデザインなんですが、ひとつあるだけで空間を引き締めることができます」
シンプルな印象が強いデザイナーである一方で、それだけに収まらない個性を感じるのだと作原さんは言います。
「あるメーカーの撮影現場に本人がいらっしゃったことがありました。そこに私物をもってきて、スタイリングに入れることを提案されたんです。それが全然シンプルじゃなかった(笑)。いろんな奥行きがあるから、それがデザインに表れているんだと思いました」

HAY
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ジャスパー・モリソンショップには、彼が考えるデザインの正解が並んでいるようだと山本さんは話します。
「ジャスパーはものをデザインするだけでなく、自分が興味をもつものを集めて、書籍や展示として発表することも行ってきました。有名なスーパーノーマルもそのひとつで、彼独特の視点はすごく影響力をもっている。そういう目でセレクトされたものが、あのお店には詰まっています」
彼のデザインは、日常の定番として飽きることなく長く使われています。単にスタイルとしてのシンプルやミニマルでは、なかなか時代を超えた定番にはならないでしょう。今回のスタイリングを通して、作原さんはあらためてジャスパーの作風をこう捉えました。
「などやは時間を経た力強さのある日本家屋なので、HAYの新作がどう見えるかは難しいかもしれないと思っていました。しかし実際に置いてみるとまったく負けていない。それだけの力や奥行きがあるんです。ジャスパー・モリソンを知らない人にも素敵だと思わせる何かがあるし、スタイリングの想像力をかき立ててくれます」

第2部では山本さんに代わり、「などや」を主宰する建築家の岡村俊輔さんが参加。アウトドア向けのデザインから、それがあるライフスタイル、そして建築や現代人の意識へと話題が広がっていきました。岡村さんによると、住空間の内と外をはっきり区別するようになったのは近代以降のこと。それもエアコンの普及により、そのふたつが完全に分けられるようになったと言います。
「建築のモダニズムは100年以上前から進行しましたが、日本でエアコンが20~30%まで普及したのは1970年代。だから内と外はまだ50年くらいしか経っていない新しい概念でもあります。ただ、その変化によって室内の生活と自然とが完全に切り離され、土着性や場所性も失うことになった。昔から人々が目指していた都市の状態が完成したのが現在なのです」

HAY
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インテリアスタイリストの作原さんは、10年ほど前からアウトドア向けのアイテムを使ったスタイリングを頻繁に依頼されるようになったそうです。アウトドア用品はコンパクトだったり、軽量だったり、折り畳みが可能だったりと、普段の暮らしでも役立つ機能をそなえていることが多いのです。さらに現在は、インドアとアウトドアの境界を超えて使えるものがいっそう増えてきました。同様の傾向はファッションにも見られるようです。
「今回のHAYのジャスパー・モリソンのアイテムも、もちろん外で使っても格好いいし、部屋のなかでも全部使えると思いました。特に日本の部屋の大きさには合っています。それくらいの軽やかさで、内と外のボーダーを気にしないで取り入れられるものばかりです」
肉親が住んでいたため、学生時代からデンマーク・コペンハーゲンを旅することが多かった作原さんは、現地の人々が気軽に屋外での生活を楽しむ様子に親しんできたといいます。
「北欧の人たちは太陽の光が大好きだから、いつも光を求めて外にいるという印象がありました」

ヨーロッパ以上に都市化が進み、集合住宅での暮らしが当たり前になった東京のような場所では、内と外との境界が必要以上に強固になってしまいました。現在もお花見のような習慣はありますが、どちらかというと非日常の楽しみ。もっと普段からアウトドアを楽しむには、ヨーロッパの感覚を参考にしながら、日常のデザインを見直すことがヒントになりそうです。
「きっかけはプロダクトでも、それを使って気持ちのいい風景を見たり、そこでコーヒーを飲んだりする体験をすると、その時間の魅力に気づかされる。そういう人が増えてきた気がします」と作原さん。このような動きをふまえ、岡村さんはこう考えているそうです。
「内部空間を拡張することが自分たちの幸せだと思ってきたのに、それが完成を迎えた時代に、アウトドアを求めようとするのはおもしろい。これはトレンドというよりも、おそらくもっと根源的なこと。その本質が、時代が大きく変化するなかでまだ言語化されていないから、アウトドアと呼ばれているのかも」

HAY
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「たとえば一戸建てにある庭は、人工物でも完全な自然物でもない曖昧なもので、東京では全土地の1%しかありません。しかし本来、土地というのは基本的に曖昧だった。それを無理矢理にカテゴライズしたのが近代です。誰もが外部性を求めるのは、そんな曖昧で名前のないものを受け入れようという態度かもしれません。ホモサピエンスは何十万年もそこで過ごし、そのための体を今ももっているわけですから」と岡村さんは話します。
HAYもまた、「HAY OUTDOOR MARKET BY JASPER MORRISON SHOP」を通してアウトドアリビングを提唱しています。それは快適で楽しい時間を過ごすだけでなく、人としての素直な感覚を取り戻すこと。そして既存の住環境に囚われずに意識を解放することです。そんな体験にこそ、デザインの意味があるのではないでしょうか。

土田貴宏 ライター/デザインジャーナリスト。
2001年からフリーランスで活動。プロダクトやインテリアはじめさまざまな領域のデザインをテーマとし、
国内外での取材やリサーチを通して雑誌やウェブサイトで原稿を執筆。東京藝術大学などで非常勤講師を務める。
デザイン誌「Ilmm」(FLOOAT刊)エディター。